生活のこと

胃カメラデビュー

体のサインを見逃さずに

最近食欲不振が続いていた。目や口は食べ物を欲しているのだけど、実際に食べると胃が張って苦しくなる。ずっと立っていると体が重く感じる。横になっていると収まってくる。その繰り返しだった。

ここひと月はライブが近かったこともあり、高い声を出すためのトレーニングをしたり、緊張も原因のひとつかと思っていたので、そういう意味でバランスを崩しているという自覚はあった。ライブ当日も体と気持ちのコンディションを整えることに集中した。打ち上げでは楽しかったこともあり結構食べてしまった。

翌日も翌々日の朝も不調は続いたので、家のすぐ近くにある総合病院に行った。血液検査と問診。「胃カメラは飲んだことありますか?」と聞かれ、ないと答えると勧められた。年齢的にも一度受けてみるのもいいなと思い、3日後に予約を入れた。検査とはいえ体にものを入れるので、同意書にサインさせられた。

麻酔を使用するかという選択肢があった。麻酔を打つと楽ではあるが、終わって1時間は病院で寝ていかないといけないという。その後も運転はダメ等の制約があることから、これでは仕事にならないだろうと判断し、「麻酔ナシ」を選択した。胃カメラを自分の意識がしっかりとした中で体験してみたいというのもあった。

その日は薬を処方してもらって帰った。病院の薬は効果があり、胃の張りはあまり感じなかったが、食欲の方はやはり控えめで、ヨーグルトや果物やスープやおかゆ等を中心に食べた。張りは減っても、立っていたり座り続けていると胃が重く感じてくるので、時々横になって体を落ち着かせた。

前日の夜9時からは飲食禁止。元気な時の検査前ならお腹が減って耐えられないが、幸か不幸か胃の調子が悪いため飲食禁止も苦にならず、胃カメラデビューの朝を迎えた。


待合室でできることできないこと

指定の9時10分に病院の受付を済ませたが、検査室の前で呼ばれてからが長かった。それならばと思い、スマホで「胃カメラ コツ」と検索して、経験談を読むことにした。

人により受け方も感想も様々だが、楽だったという人の経験を読むと、「ゆっくり呼吸する」ことが大事らしい。あとは「力を抜く」こと。それから「検査前にのどに溜める麻酔薬をなるべくのどの奥の方にもいきわたらせるようにすること」。これなら私大丈夫そうだ。つばは飲み込めないので遠慮せずよだれのように体の外に出すこと。恥ずかしいけどまあ仕方ないね。

20分位してようやく中に通されたが、そこも待合室。荷物をロッカーに預け名前を確認し、そこからまた15分経過。「すいませんね、お待たせして」と看護師さんが何度も声をかけてくる。前の人でてこずっているのだろうか。ちょっと気になったがしばらくするとやってきて、注射器のようなもので口の中に薬を入れられた。口の中の泡を取るって言ったかな。乳酸菌飲料みたいな味で問題なし。

次にドロッとした液体を、今度は「あごをあげて上を向いたまま、のどの方で3分間ためてください。」と。こちらもチェルシーのヨーグルト味みたいな乳酸菌風味。3分たって吐き出し準備完了。

ここまでは順調だったなぁ~。しかし予約時間から1時間経過。ようやく検査室に通された。


いざ胃カメラ。びっくりするほど体は正直

検査室に入り名前を確認。ベッドに左を下に横たわり右腕に血圧計を装着。胸とお腹の3か所と指に心電図計を装着。頭の下には大きな紙がひかれ、顔をやや左下に向ける。足は左足まっすぐ。右は膝を曲げて左足の下に。そしてマウスピース。

先ほどまでの静けさがうそのように、看護師さん二人であれよあれよという間に準備完了。マウスピースを付けたとたんに「はい、カメラ入ります」とお医者さんが黒い管をするすると私の口から挿入し始めたため、先ほどできていた心の準備が完全に乱れてしまった私は、体が勝手に異物への拒絶反応をしてしまった。

つまり、おえ~、となってしまったのである。だけど時すでに遅し。先生からは「ごめんなさいね。最初はちょっと痛いかもしれないけどもう少し中に入りますからね」と優しい声で言われるし、肩を抑える男性の看護師さんからは「肩の力抜いて」「息はため息を吐くように」と言われ、そのようにしようと思うのだけど、なにせその余裕がない。

カメラが進む。体の中は抵抗する。ゲップ、肩の力抜こうとする。またカメラ進む。抵抗する。おえ~、ため息、涙、カメラ進む、肩、おえ~…。

なんとかリズムに乗ろうとするのだけど、乗れない。そのことを伝えたいが口がふさがっていて伝えられない。その一方で、先生や看護師さんの声が聞こえていて、体の中をカメラが進んでいく感覚を楽しんでいる私もいる。

カメラは食道を通り胃を抜けて、「今十二指腸です」と言われるまでは結構つらかったが、私がようやく落ち着きを取り戻したのは「胃に潰瘍がありますね」と言われた時だった。
「ああ、やっぱりね」という落胆と安堵の入り混じった感覚。それとカメラが動かなかくなったことで呼吸のリズムが取り戻せたこと。ここからはいい子になれる気がした。

その後、検査に回すために組織を取るということで、黒い管の中にさらに細い管が入れられ、3回ほど「チョキン」と切り取る感覚もしっかり感じ(痛くはなかった)、10分ほどで検査は終わった。

起き上がると髪の毛までよだれまみれで情けなかった。大量のティッシュを使ってしまったが致し方ない。

映画みたい!自分の体を見るのは楽しい

検査後に、先生がパソコンのモニターを見ながら説明してくれた。17インチのモニターに私の体内が映し出されている。「やや赤いですね。炎症を起こしています。ピロリ菌もいます」。なるほど。

カメラがずんずん進むと「胃の出口のところに2つ潰瘍があります」と白い楕円形のものを指した。「良性とは思うけれども検査してみます。」真剣な話なんだけど、映像自体は昔見た映画「ミクロの決死圏」みたいでちょっと楽しい。

初めての胃カメラは壮絶だったけれども、麻酔ナシで体感してみてよかったと思う。潰瘍の実際の形や色や大きさがわかったので、なんとなく愛着がわいてしまいそうだけど、これらも含めて私の体がうまく機能するように生活を整えていこう。

続きは、胃カメラリベンジ!

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